ある病院で、総合診療医の大規模な体制を築きつつある現場の先生と対話する機会があった。総合診療医が数十名近く所属しており、今後さらに「人数を増やしていきたい」「リクルートを強化したい」という発言があった。

私がそこで感じたのは、どこか割り切れない違和感だった。


数を増やすことは本当に目的か?

医師を増やす、組織を拡大する。その考え方自体は理解できる。
だが、「本当にそれだけの人数が必要なのか?」「なぜそれだけの数を目指すのか?」という問いは、やはり無視できない。

私は医療を「ニーズに応える営み」と捉えている。

つまり、数を増やす前に、「何が求められているのか」「どこで必要とされているのか」を問うべきだと考える。

病院に総合診療医がこれだけ必要なのか?

それとも教育・研究・体制維持のための組織的論理が先行していないか?

そうした違和感が、言葉の端々ににじんで感じられた。


医療は「目的」から始める

マーケティングや人事の文脈では「リクルート」や「拡大」は重要な戦略ワードだろう。
だが、医療の現場においては、まず目的があり、それに応じた人材配置がなされるべきだと考える。

数を目標にしてしまえば、採用が自己目的化し、教育の質や地域ニーズとの乖離が起こる。
重要なのは、「どれだけ増やすか」ではなく、「どんな現場で、どんな意味で活かされる人材か」を描けているかどうかではないか。


大きくすることと、深くすること

組織を「大きく」することに価値がある場合もある。
だが、医療の多くは、人の痛みに寄り添う「深さ」の仕事である。

数の論理と、ケアの質の論理がすれ違い始めた時、我々は本来の目的を見失いかねない。

私はやはり、地域の、現場の、目の前の患者にとって必要かどうかという基準で、人を迎え、育て、成長していきたいと思う。


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