皆さん、こんにちは。島根大学医学部附属病院 総合診療医センターの坂口公太です。
去る11月22日(土)、Hawaii Medical Education Program (HMEP) / HITHの講演会にてお話しする機会をいただきました。 今回のテーマは、「RuralからGlobalへ:僕が切り拓く挑戦 (From Rural to Global: Forging a New Career Path as a Challenger)」 です。

普段、私が島根という「Rural(地方)」のフィールドで何を考え、どう世界(Global)と繋がろうとしているのか。医学生や若手医師の皆さんに向けて、私のキャリアとパッションを共有させていただきました。
3つの顔を持つ医師として:越境するキャリア
まず、私の自己紹介として「3つの顔」についてお話ししました 。

- 臨床医 (Family Physician):目の前の患者さんに寄り添うこと。
- 研究者 (Researcher):現場の疑問を学術的な知見へと昇華させること。
- MBA (Management):組織やシステムの課題を解決すること。
私は初期研修を行った沖縄、そして現在拠点を置く島根での経験を通じ、「目の前の患者さんを救うだけでは、地域は良くならない」という課題に直面しました 。
素晴らしい志を持つスタッフがいるのに連携がうまくいかない、良い取り組みが個人の努力に依存している……。 そうした「もったいない」現状を変えるために、私はあえてMBAで経営とリーダーシップの視点を学び、それを医療現場に持ち込むという「越境」を選びました 。
Ruralは「世界の縮図」であり、イノベーションの源泉
「地方(Rural)に行くとキャリアが閉ざされるのではないか?」 そう不安に思う学生さんもいるかもしれません。しかし、私は全く逆だと考えています。

高齢化やリソース不足といった日本のへき地が抱える課題は、やがて世界中が直面する未来の課題そのものです 。 そして、「制約こそがイノベーションを生む」。 限られた環境だからこそ生まれる創造があり、小規模だからこそ新しい試みがしやすい。Ruralこそが、世界最先端のテーマに取り組める場所なのです 。
現場の「なぜ?」を世界の「知」へ:研究成果
講演では、実際にRuralにいながら世界と戦えることを、具体的な研究成果として示しました。
一つは、ChatGPTを用いた質的研究の可能性を探る論文(JMIR)です 。

もう一つは、日本の医学部におけるリーダーシップの多様性に関する研究(JAMA Network Open)です。現場の疑問をデータで読み解き、エビデンスとして世界に発信しています 。

世界への扉はどこにでもある
先日はシンガポールを訪問し、アジアの最先端に触れてきました。

そこで確信したのは、「日本(島根)での実践は、世界レベルで関心を持たれている」ということです 。 ハーバード大学のプログラムや海外短期研修など、今はオンラインや短期渡航を活用して、地方に拠点を置きながら世界と繋がる方法はいくらでもあります 。
皆さんへのメッセージ
講演の最後に、私が最も伝えたかったメッセージは以下の2点です。
- あなたの「ユニークさ」を武器に 王道だけが道ではありません。人と違うことに価値があります。皆さんの興味や原体験こそが、未来を創るのです 。

2.「Rural」をチャンスに変える Ruralはグローバルなキャリアを諦める理由にはなりません。むしろ、そこから世界を変えるイノベーションが生まれます 。

私の次の挑戦は 「Bridge in Asia」。日本とアジアの医療を繋ぐ架け橋となることです 。 島根から世界へ。私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。

少しでも興味を持ってくれた方は、ぜひ島根に見学に来てください。 皆さんの「当たり前」を見直し、新しい可能性を一緒に探しましょう!



