皆さん、こんにちは。島根大学の坂口公太です。

本日は、私たちの仲間であり、島根の医療現場で本当に熱い志を持って奮闘されている素晴らしい医師の「快挙」を皆さんに共有させていただきます!

島根県立中央病院 小児科の大塚友絵先生が執筆された論文が、小児科領域の国際的な医学雑誌である『Pediatrics International』に見事採択されました!

大塚先生は、日々の多忙な臨床業務をこなしながら、地域医療の課題解決につながる全国規模のデータ解析に粘り強く取り組んでこられました。今回の論文完成と採択は、大塚先生の「現場を良くしたい」という強い熱意と努力の結晶です。私自身、共著者チームの一員として近くで議論を重ねさせていただきましたが、大塚先生の真摯に研究と向き合う姿には本当に大きな刺激をもらいました。

今回は、大塚先生が論文に込めた想いや、完成までの舞台裏、そして未来を担う後輩たちへの熱いメッセージを寄稿してくれましたので、ぜひご覧ください!

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【寄稿】Pediatrics International誌 論文採択の報告

島根県立中央病院 小児科 大塚友絵

1. はじめに

【自己紹介】 島根県立中央病院 小児科の大塚友絵です。私は名古屋大学の看護学専攻を卒業し、看護師・保健師免許を取得した後、島根大学医学部へ編入しました。卒業後は愛知県で初期研修を行い、卒後3年目より島根県立中央病院の小児科で勤務しています。

私が日々の診療で大切にしていることは、「病気を診るのではなく、患者さんを看ること」です。 看護学生時代に培った視点や経験を活かし、疾患や検査結果だけを見るのではなく、患者さんの生活背景や人生観、価値観にも目を向けながら診療することを心がけています。

この度、Pediatrics International誌に「Physician Characteristics Associated with Choosing Pediatrics in Japan: A Nationwide Survey」という論文が採択されましたので、ご報告させていただきます。

2. 研究の概要と今後の展望

【研究の概要】 本研究では、日本全国の医師6,415名を対象とした調査データを用いて、「小児科を選択した医師にはどのような特徴があるのか」「小児科医の中で病院勤務をしている医師にはどのような特徴があるのか」を分析しました。

その結果、小児科を選ぶ医師には、女性であること、子どもがいること、国公立大学出身であることが関連していました。また、小児科医の中で病院勤務を選択している医師では、若手であること、へき地で働く意欲があること、地方出身であること、父親が医師でないことが関連していました。

【今後の展望】 これらの結果から、小児科医の進路は、本人の興味や適性だけでなく、教育環境や育った地域、家庭環境など、さまざまな背景の影響を受けていることが示されました。今後、小児医療を支える人材を確保するためには、医師数を増やすだけでなく、地域医療教育の充実や、多様な背景を持つ医師が小児科を選び、長く活躍できる環境づくりが重要であると考えられます。

3. なぜこの研究テーマを選んだのか?

【日常の疑問や課題意識】 島根県では小児科医不足が大きな課題となっています。私自身も日々診療を行う中で、人手不足による当直回数の多さや業務負担の大きさを実感してきました。一方で、全国の医師数を調べてみると、小児科医は全医師の中で極端に少ない診療科ではなく、一定の人数・割合が存在していることが分かりました。このことから、小児科医療の課題は単純な「人数不足」だけではなく、「地域や勤務先への偏在」が大きく影響しているのではないかと考えるようになりました。

このことから、「どのような背景を持つ医師が小児科を選択しているのか」、さらに「どのような背景を持つ小児科医が病院勤務を選択しているのか」に着目しました。これらの特徴を明らかにすることで、小児科医を増やすだけではなく、必要とされる地域や医療現場で活躍する小児科医をどのように育成していくかを考える手がかりになるのではないかと考えました。

4. 論文完成までの舞台裏とチームワーク

【論文執筆で苦労したこと】 今回の研究で最も難しかったことは、論文全体の「軸」を保つことでした。研究を進めていく中で、新たな解析結果が出たり、関連する先行研究を調べたりするたびに、「この視点も重要なのではないか」「この結果も伝えたい」と考えることが増えていきました。

しかし、書きたいことをすべて盛り込むと、研究当初に設定した問いから少しずつ離れてしまい、論文として最も伝えたいメッセージが曖昧になってしまいます。 共著者の先生方との議論を重ねながら、「この研究を通して最も伝えたいことは何か」「読者にどのようなメッセージを届けたいのか」を何度も見直しました。研究結果を出すことだけでなく、その結果をどのようなストーリーとして伝えるかという部分に、論文作成の難しさと奥深さを感じました。

【Reviewerからの指摘を経て】 査読では2回にわたり、多くの貴重なご指摘をいただきました。論文を書いていると、気づかないうちに研究者自身の視点や解釈に引っ張られ、視野が狭くなってしまうことがあります。 査読者という第三者の視点から指摘をいただくことで、自分たちの考えを改めて整理し、より客観 velvet で説得力のある論文へと改善することができました。研究は、結果を出して終わりではなく、多くの意見を取り入れながら磨き上げていく過程そのものが大切なのだと実感しました。

【共著者チームとのディスカッション】 今回の論文は、多くの先生方との議論や支援があって完成したものです。解析結果の解釈や考察の方向性、文章表現に至るまで、共著者の先生方と何度もディスカッションを重ねました。その中で、自分一人では気づくことのできなかった視点や考え方を数多く学ぶことができました。

また、研究内容だけでなく、共著者の先生方の仕事への向き合い方からも多くのことを学びました。臨床業務でご多忙な中でも、依頼されたことに迅速に対応され、常に前に進めていく姿勢には大きな刺激を受けました。研究を進める上では、知識や技術だけでなく、周囲と協力しながら一つ一つ積み重ねていく姿勢の大切さを改めて感じました。

5. 後輩の方々へのメッセージ

私が研究を通して感じたことは、研究の始まりは決して特別なものではないということです。 日々の臨床や実習の中で感じる「なぜだろう」という小さな疑問が、研究の出発点になります。私自身も、学生時代や臨床の中で感じた疑問や違和感をそのまま流すのではなく、「本当にそうなのか」「何か根拠を示すことができないか」と考えたことが、研究を始めるきっかけになりました。

研究というと、一部の限られた人が行うもの、特別な知識や能力が必要なものと思われるかもしれません。 しかし、最初から大きなテーマや明確な答えを持って始める必要はありません。まずは日々の診療の中で生まれる小さな疑問を大切にし、それを言葉にしてみることが第一歩だと思います。「なぜこの薬を使うのか」「なぜこの患者さんにはこの治療が必要なのか」「もっと良い医療の提供方法はないのか」こうした疑問を持つことは、研究に繋がるだけでなく、臨床能力を高めることにも繋がります。研究と臨床は別々のものではなく、互いに影響しながら成長していくものだと感じています。

また、論文を書く力は、医学知識や臨床経験とは少し異なる能力です。臨床能力は経験を積むことで高まっていきますが、研究の進め方や論文の書き方は、意識して学ばなければ身につきません。特に学生は時間を確保しやすい時期だからこそ、始めるには非常に良いタイミングだと思います。

研究は、想像しているよりも高い壁ではありません。もし少しでも興味があるなら、まずは周囲に「やってみたい」と声を出してみてください。このチームには熱心に指導してくださる先生方が数多くおられます。ぜひ、その一歩を踏み出してください。

【結びの言葉】 今回、このような形で研究成果を発表できたことは、指導してくださった先生方や共著者の先生方をはじめ、多くの方々の支えがあったからこそだと感じています。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。

これからも一人の小児科医として、目の前の患者さんを大切にしながら、日々の臨床で感じる疑問を大切にし、より良い医療につながる研究にも取り組んでいきたいと思います。

【結び:坂口公太より】

大塚先生、素晴らしいレポートをありがとうございました!

日常の臨床現場でのリアルな課題意識(小児科医の偏在)を出発点にして、全国データの分析という大きな研究へと昇華させ、見事に国際誌への採択を勝ち取ったプロセスは、まさに私たちが目指す「臨床と研究の幸福な融合」のロールモデルそのものです。

大塚先生のレポートにもあった通り、研究の種は日常の「なぜだろう」の中にあります。そして、私たちのネットワークには、その小さな疑問を形にし、世界へ発信するのを全力でサポートする頼もしい指導医や仲間たちが揃っています。

大塚先生に続く次のチャレンジャーが生まれることを、私も心から楽しみにしています。 大塚先生、本当におめでとうございました!これからも島根の地域医療・小児医療を一緒に盛り上げていきましょう!